Yashiro Aki

Minato Machi Zesshou

Yashiro Aki


こんなわたしも春には都会で
笑い転げて暮らしてた
狭い部屋でも小鳥を飼って
好きな男にもたれてた
北国雪の列車に乗って
流れる景色に泣いたのは
夏から秋の境目で
すべてかかげる頃のこと
ああ海洋に陽が落ちる

そしてわたしは無口になって
波の音聞いて生きている
かもめばかりが逃げ回う海を
日がな一日見つめてる
お立ち寄り場所もまだ決めかねて
荷物もとかず部屋の隅
秋から冬へ日が移り
死にたくなればそれもよい
ああ海峡に雪が舞う

浮き塔台が身をもみながら
港のはずれに霞むのは
冬から春へ駆け足で
女の胸も溶ける頃
ああ海峡に風が吹く